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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)81号 判決 1949年8月02日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由は末尾に添えた書面記載の通りであつて、これに対する当裁判所の判断は次の通りである。

民事訴訟法が口頭弁論期日の変更につき制限を付したのは、主として当事者一方の恣意によつて訴訟が遅延することを防止し、以つて相手方の権利保護の迅速を期するにあるのであるから、当事者の一方に真に出頭し難い顕著な事由があつて期日の変更を申請した場合においては、たとい相手方の同意がなくとも裁判所はその申請を許可してその者に口頭弁論の機会を与うべきものであることは勿論である。そこで、本件において上告人の原審口頭弁論期日の変更申請につき顕著な事由があつたかどうかを記録によつて調べて見るに、原審における昭和二四年二月一二日の第二回口頭弁論期日の変更については、相手方の同意はなく、ただ控訴本人(上告人)から当日着の電報を以つて「病気のため行けぬ」として変更の申請がなされたのであるが、真に出頭不能の程度の病気であつたかどうかは、何らの疏明方法の提出もないから不明であつて、この点においてすでに右申請は認容に由なかつたものである。されば、原審が控訴人(上告人)の期日変更申請を容れず控訴人(上告人)及び代理人共不出頭のまま結審し、控訴人(上告人)敗訴の判決を言渡したのは違法であるとは言えないのであるから、論旨は採用することができない。

よつて、本件上告を理由のないものと認め、民訴法第四〇一条第九五条第八九条を適用し主文の通り判決する。

以上は、当小法廷裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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